「あなたの人生最大の借金は何ですか?」と質問されたら、どのように答えるでしょうか?

 

一般的な日本人は誰もが一度は借金をするでしょう。もし死ぬまでに一度も借金をしない人は、大金持ちか山奥で暮らしているとしか考えられません。
 
そして普通の人はきっとこう答えるでしょう。「それは住宅ローンです」と。
 
自分の家を持つことが一人前の証拠と考えられている国は多く、日本でもそのような考え方があります。
 
「結婚して子供が生まれたからそろそろ家を…」が日本では当たり前の感覚なのです。
 

しかし家を買うには多額の費用が必要で、それを補うのが住宅ローン。住宅ローンは低い金利で住宅資金を借りることができ、返済も長期間に設定することができる金融商品です。
 

そのため月々の返済も少なく、収入に対する負担もそれほど大きくなりません。
 
しかし、住宅ローンは長期であるが故に、トラブルが生じると一気に返済不能に陥ってしまう危険性も指摘されています。
 

もし突然、住宅ローンが支払えなくなったら、どのような行動を取ればよいのでしょうか?
 

住宅ローンの長期返済には危険が伴う

 
住宅ローンは金利の低さに加え、返済期間が長いことが特長です。若い人では30年~35年返済が多く、金利も他のローンと比較して半分以下で借入れすることができます。
 

つまり人生の1/3を住宅ローンの返済に費やす人も多く、それだけに生活上のトラブルにも巻き込まれやすくなります。
 

例えば「リストラ」や「会社の倒産」。突然会社の上司から呼ばれてリストラ宣告を受けることがありますが、そうなると数ヶ月後には無収入になってしまいます。
 
仕事を見つけることができれば安心ですが、なかなか同程度の収入を確保するのは難しいでしょう。
 

また会社の倒産も生活を狂わせる原因になります。倒産は突然のことで前日まで気が付かない社員も多いでしょう。
 
出社しても会社に入れないなどの状況で、倒産に気付くことが大部分です。
 

リストラと違い倒産では、その月の給与さえもらうことができなくなります。
 
そうなると新しい仕事を探す前に、生活費と住宅ローンの返済費を確保しなくてはならなくなるのです。
 

人生は順風満帆なのが一番ですが、長い住宅ローン期間の間には様々な危険が待ち構えていることを忘れてはいけません。
 

住宅ローンの滞納は2回目が鍵となる

 
住宅ローンを始めとするする借金の返済では、滞納があっても1回で大事に至ることはありません。人間誰でも「うっかり」することや「つい忘れてしまう」ことはありますよね。
 
住宅ローンの返済も同様で引落し口座に入金を忘れたり、口座変更手続きを忘れてしまったりすることはよくあることです。
 
これは銀行サイドも十分に理解していることから、1回返済が滞った程度では大きな問題にはしないのです。
 
大抵の銀行では電話による連絡と、書面による督促状が送られることになります。
 

督促状と言っても「未払い金を入金して下さい」程度のもので、特に切羽詰まった印象は受けないものです。
 
また督促状と並行して銀行から電話による案内も行われます。
 

この場合も「~までに口座に入金下さい」とか「○○の口座にお振込み下さい」との内容で、督促ではなく、あくまで顧客に対する注意喚起程度のものです。
 

しかし、いくら督促を受けてもお金がないと払うことができません。
 
また督促内容も緩かったことから「まだ大丈夫だろう」と考えて、返済をさらに行わなくなってしまうことになります。
 

実は銀行の対応の分かれ目は2、3回目の滞納です。1回目の滞納ではあくまでミスが要因であることに対して、2回目、3回目となると明らかに支払う意思がないと判断されるのです。
 

そこで銀行は滞納が始まってから3ヶ月を目途に、住宅ローン債権を「延滞状態」としての処理を開始するようになります。
 

延滞の督促状は今までのと違うフォーマット

 
銀行と相談もない状態で滞納が2~3ヶ月も続くと、今までの督促状とは明らかに違うフォーマットのものが送られてきます。そこにはある特徴が見られます。
 

【延滞における督促状】

  • 期限の利益の喪失に該当すると通知
  • 一括返済の要求
  • 法的手続きの開始
  • 至急来店しての面談要求
  • その他

「期限の利益の喪失」とは住宅ローン契約に違反したことにより、契約が法的に無効になったとの通知で、分割返済ではく一括返済を求めることができる条項です。
 
また一括返済できない場合には裁判を行って、強制執行を申し立てるとの意味合いも含まれています。
 
このような内容が書かれている督促状は、銀行サイドも滞納を放置できないとの現れでありサインでもあります。
 
 
放置するととんでもないことになるかもしれません。
 

ブラックリストに登録されてしまう

 
滞納により延滞状態になると銀行は、契約している信用情報機関に債務者を登録します。
 
いわゆるブラックリストに登録されるのですが、これを行われることで新規のローンやクレジットカードが作れなくなってしまいます。
 

ブラックリストの登録は約5年間で、その間は様々な金融サービスが利用できなくなるのです。
 
もはや銀行にとってお客様ではなくたったことを意味しています。
 

保証人に返済を求める代位弁済

 
この段階になると銀行は、保証人に対しても連絡を取って返済を求めることになります。
 
特に連帯保証人は滞納がない状態でも返済を求めることが可能なので、もっと早い段階で督促が行く場合も少なくありません。
 

代位弁済とは保証人が債務者に代わって債務を返済することで、要は債務者の代理人として返済を行うことを言います。
 

銀行としては債務者と話をしてもらちが明かないので、保証人に対して支払いを求めるのですが、甘く考えていると保証人に対して強制執行などの強硬策を行うこともあるので注意したいところです。
 

保証人としては「債務者が行方不明でもないのに自分に請求がくるなんて…」と到底納得できないかもしれませんが、連帯保証人とは債務を連帯して保証しているので仕方がありません。
 

また債務者よりも連帯保証人の方に資産があるケースでは、連帯保証人に対して一括返済を求めてくることもあります。
 
この段階になると保証人が債務者に連日連絡をするようになります。そして人間関係に大きな亀裂が入ることも珍しくありません。
 

知らない間に借金が保証会社に移ってしまう

 
銀行によっては住宅ローン契約時に、保証会社を利用しなくてはいけません。保証会社とは住宅ローンの返済が滞り、回収の目処が立たなくなった時に、貸付けたお金を弁済してもらう会社で、保証人と同じ役割を持っています。
 

つまり保証会社を付けることで、連帯保証人は不必要になり住宅ローンが借りやすくなると言う訳です。
 
しかし、保証会社を付けるには一定の審査があり、収入や信用調査により合否が決まります。
 

債務者が「期限の利益の喪失」の状態になると銀行は、債務者に一括返済を求めますが、実際にはできるはずがありません。
 
そこで銀行は保証会社に対して代位弁済を求めることになります。
 

連帯保証人と違い保証会社はビジネスとして、保証業を行っているのだから、銀行に借入れ残額を利息と共に返済することになります。

 
債務者としては保証会社が借金を返済してくれるのですから有難い話なのですが、世の中そうは上手く行きません。
 

保証会社は銀行に対して一括返済しますが、その時に債務者の借金は保証会社へと移行することになります。
 
つまり今までは銀行に借りていた住宅ローンが、保証会社から借りている借金に変わってしまうのですね。
 

保証会社は債務者を保護する会社ではありません。あくまで債権者である銀行を保護する会社で、債務者の返済義務は一切変わらないのです。
 

保証会社からの督促と担保物件の売却の選択が始まる

 
住宅ローンの債権が移行すると、今まで銀行から送られてきた督促状が保証会社からに変更されます。
 
その時点で今までお世話になった銀行との取引は終了し、銀行に相談に行っても相手にしてもらえなくなるでしょう。
 

この時になって「俺は金融ブラックになったんだ」と気付く人も多いのですが、ここからが本当の戦いの始まりです。
 

保証会社は督促状で契約に従い一括返済を求めてきます。そして書面や電話によって面談の要求と日時を指定してくるでしょう。
 
また自宅に訪問してくることもあります。
 

そしてこれからの返済について話し合いを行いますが、その内容で最も中心的な話が「自宅の売却」です。
 
住宅ローンでは自宅が抵当権設定されており、返済ができない以上、売却を求められることになります。
 

保証会社からは2つの売却方法を提案されます。

  • 任意売却で自宅を処分する
  • 競売で自宅を処分する

任意売却は抵当権を設定している保証会社の了承のもと、一般の不動産市場で自宅を売却する方法で、市場価格と同じ値段で売却することができます。
 
競売は裁判所が債権者である保証会社の申し立てにより強制的に売却する制度で、一般市場価格よりも3割~5割も安い価格で売却すことになります。
 
売却で有利なのは任意売却ですが、それを決断すると自宅を手放すことが決まってしまいます。
 
愛着のあるマイホームを簡単に手放したくない感情から、保証会社の申し出を感情的に断ってしまう債務者も多いのです。
 

また、感情的な債務者の中には保証会社との面談も一切受けず、訪問しても威嚇して追い払う人もいるようです。

 
しかし、ここでの判断が後々の悲劇を生むかもしれません。
 

任意売却が進まない場合は競売へ

 
不動産は売りに出してすぐに売却できるものではなく、早くても数ヶ月は必要になります。
 
任意売却では半年以上も売却にかかるケースもあり、特に地方エリアではなかなか難しいこともあります。
 

また債務者が任意売却に協力的でなく、話し合いも決裂してしまうこともあります。
 

そのような状況になると保証会社は裁判所に対して競売の申し立てを行うことになります。競売は強制的に担保である自宅を裁判所が売却する制度です。
 
競売では債務者が知らない間に、手続きが進むことが一般的で、購入者が決まることで即座に自宅から退去しなくてはいけません。
 
何の準備もないままに追い出されてしまうケースもあり、精神的にも辛い思いをすることになるでしょう。
 
また子供がいる場合では新しい住居、学校の転校などの問題も出てくるので、その後の生活に暗い影響を与えてしまうのです。
 

ここで注意!自宅を売ったことで債務はなくならない

 
夢のマイホームは住宅ローンの滞納により、数年で失ってしまいました。「仕方がないよ、1からやり直そう」と前向きに考えることは大切な心構えです。
 

しかし現実はこれよりも厳しく、1からやり直すことは難しいでしょう。実は多くのケースで自宅を売却しても、住宅ローンはなくなりません。
 

【競売で自宅を失ったTさん】
 
Tさんは8年前に自宅を住宅ローンを利用して購入しました。しかし購入から7年後に会社が倒産し収入が激減、返済ができなくなってしまったのです。
 
銀行からは督促されていたのですが、支払うことができません。
 
そして保証会社に債権が移行され、競売にかけられることになったのです。その時点でTさんのローン残額は2500万円でした。
 
裁判所が任命した執行官の評価額は1700万円です。
 

1700万円からスタートした競売ですが、結果として落札された金額は価格は1800万円だったのです。つまり費用抜きの単純計算では700万円の不足が出てしまいます。

 
Tさんは自宅を手放したことで全てが終わると考えていたのですが、保証会社に対して担保なしの借金が700万円残ってしまったのです。
 
そして保証会社と話し合いを行った結果、700万円の借金を分割で返済することになりました。<終>
 

自宅の売却方法が任意売却でも競売でも、ローン残額に充当しても足りない場合では、残りの額が担保なしの借金になります。
 
そして原則としては一括返済を求められるのですが、現実的には新たな契約を結んで分割返済することになります。
 

「自宅を売ったから終わった」…これは間違った判断ですね。
 

住宅ローンの滞納では様々な判断ミスが最悪を招く

 
このように住宅ローンの滞納では、その段階によって様々な判断が必要になります。
 
特に滞納が始まった初期の対応は重要で、銀行とよく話し合って返済を維持する方向へ進むようにしましょう。
 

ここで住宅ローン滞納時における誤った判断をまとめて見ましょう。
 
【返済を翌月に繰り越さない】
 
1ヶ月分滞納しても返済額は数万円であり、翌月分とまとめて払えると考えてしまいますが、3ヶ月分になると10万円を大幅に超えてしまいます。そうなると月々の収入では賄えなくなり、返済不能へと進んでしまうのです。
 
翌月に繰り越すのではなく、遅れてでも当月中に支払う努力をしましょう。
 
【新たな借入れはしない】
 
次に大切なのは新たな借入れをしないことです。
 
住宅ローンの返済分を新たな借入れで賄う人がいますが、これは自転車操業の始まりでしかありません。
 
借入れには必ず金利が伴うので、住宅ローンを借金で返済することは絶対に止めましょう。
 

【督促には即座に反応する】
 
督促状が届いても自分から連絡も取らないで放置することは絶対に止めましょう。
 
督促状を無視することは、銀行との話し合いを拒否し、支払いを行わない意思表示だと判断されてしまいます。
 

また裁判になった場合でも裁判官の心証が悪くなるので、督促には即座に反応して必要であれば銀行に相談に行くようにしましょう。
 

【任意売却を模索する】
 

マイホームを手放したくのは理解できますが、住宅ローンを返済できない以上、結局は手放すしかありません。
 
どんなに意地を張っても無理なのです。ここを理解してどうせ手放しなら少しでも有利な状態で売却できるように考えましょう。
 

特に競売にかけられることは避けて、任意売却を選択できるように銀行や保証会社と話し合いを行います。
 
任意売却であれば高値で売れるだけでなく、「引越し代」や「新しい住居の敷金」も交渉しだいでもらえるのでオススメです。
 

【早めに債務整理を選択する】
 

債務整理は代理人と立てて借金を整理する制度で「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」などがあります。
 
借金が住宅ローン以外にもある場合には、まず債務整理を行ってから住宅ローンについて検討することが大切です。
 

住宅ローン以外の債務を整理したことで毎月の返済が減り、住宅ローンが払えるようになることがあります。
 
そうなれば自宅を手放す必要がなくなり、生活も安定することに繋がります。
 

また自宅を売却しても多額の債務が残る場合では、自己破産を行い借金を消滅させることもできます。
 
この方法では自宅と引き換えに借金を返済する必要がなくなります。
 

滞納から逃げないことが大切な判断

 
どうですか?住宅ローンを滞納した時の判断により、自宅を失った状況は同じであっても、それからの人生には違いが出てきますよね。
 

少しでも有利な状況で進みたいのなら、まずは滞納から逃げない姿勢が重要ではないでしょうか?
 
そうすることで将来的には明るい未来が待ち受けているかもしれません。
 

自分の判断が未来を決めるのです。忘れないで下さい。