お金を借りるイメージは日本ではあまり良いものではありませんよね。

 

なんとなく「生活困窮者」のようで、気軽に人に話すこともできません。

 
しかし「住宅ローン」ではどうですか?持ち家やマンションを購入する際に利用する住宅ローンには、同じ借金なのに生活困窮者のイメージどころか「大人になったなぁ」とか「大したものだ」とか良いイメージがあります。

 

 
人生最大の借金でもある住宅ローンは、自宅を担保にしてお金を借りる取引で、もし返済に支障が出たらローン会社に自宅を回収されてしまう危険性もあります。

 

 
もちろん住宅ローン以外の借金が原因でも、同様の結末になるでしょう。

 

借金の返済が滞ることで「夢の我が家が取り上げられてしまう…」このような事態を防ぐために、債務整理の一つである「個人再生」を覚えておきましょう。

 

債務を大幅に減額してくれる個人再生

 
債務整理には幾つかの種類や方法がありますが、債権者と話し合う「任意整理」と、債権が全て放棄される「自己破産」の中間に位置しているのが「個人再生」です。

 

 

任意整理とは違い、個人再生は裁判所が仲介する制度で、裁判所が再生計画を認可することで再生が開始されます。

 

個人再生を簡単に説明すると「自分の全借金の総額を計算して、これから約3年で支払える返済計画を作成し、裁判所で認可を受ける」制度と考えて下さい。

 

例えば収入が手取りで25万円しかない人が、月々の返済に15万円かかっていたら、残りの10万円で生活しなくてはいけません。それでは家族を養うこともできないですよね。

 
そこで全ての債務を一定の金額まで減額して、それを計画通りに支払うことで全ての債務が免除されるのです。

 

債務はどのくらい減額されるのだろうか

 
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」と呼ばれる2つの手続きがありますが、一般的には小規模個人再生の方が、返済額が少なくなります。

 

 
小規模個人再生の適用としてまず、債務の総額が5000万円以下である必要があります。そして原則として100万円超~1500万円以下の債務では、1/5にまで圧縮することができるのです。また支払いは原則3年間(特例5年)と定められており、その範囲で返済しなくてはいけません。

 

小規模個人再生で定める返済金額は「最低弁済基準額」を基本に計算します。

 

【小規模個人再生における最低弁済基準額】

 

  • 債務が100万円以下:全額
  • 債務が100万円超~500万円以下:100万円
  • 債務が500万円超~1500万円以下:債務の1/5
  • 債務が1500万円超~3000万円以下:300万円
  • 債務が3000万円超~5000万円以下:債務の1/10

つまりこれを見てみると、債務総額が1200万円の人は、240万円の返済を3年で返済しなくてはならず、月々の返済額は約6万6千円になります。
 
これを3年間きちんと支払うことで残りの960万円の債務が免除されるのです。

 

小規模個人再生よりも返済額が多い給与所得者等再生

 
給与所得者等再生はサラリーマンなど、安定した給与がある人が行う手続きですが、一般的には小規模個人再生よりも算出返済金額は大きくなります。

 
債務総額は同じく5000万円以下ですが、支払いは残債務による計算ではなく、収入の可処分所得の2年分と定められているのです。

 

 
可処分所得とは収入の中から、「税金」「社会保険料」などを差し引いた所得で、その2年分を3年で支払わなければいけません。

 

またこの金額が小規模個人再生で算出された金額よりも大きくなることも条件の一つになります。

 

しかしサラリーマンは必ず給与所得者等再生を選択しなくてはいけない決まりはなく、大部分が小規模個人再生を選択するのが現状です。

 
まぁ安い方がよいので、当たり前と言えばその通りですね。

 

それじゃなぜ給与所得者等再生があるの?

 
返済額が高額になってしまう給与所得者等再生ですが、「誰も使わないのなら必要ないでしょう?」と思うのも無理もありません。

 

 
しかし、給与所得者等再生には深い存在意義がありました。

 

個人再生を行うには裁判所に再生計画を認めてもらう必要がありますが、その中で各債権者からの意見も当然集められます。

 

 
その時に債権者からの異議により、認可が下りないことがあるのです。

 

「あの債務者は会社も大きく給与も安定しているのに1/5に圧縮するなんて許せない」このように債権者が裁判所に異議を申し立てることで、個人再生が行き詰まってしまい、せっかく立てた再生計画が先に進みません。

 

このような状況の時に給与所得者等再生を申請すると、返済額も上がり債権者も渋々納得してくれることになります。

 
小規模個人再生ではダメでも、給与所得者等再生なら納得して貰えると言うことがあるのですね。

 

やっと手に入れたマイホームを手放したくない時はどうする?

 
長年の夢だったマイホームを購入したのに、ほんの数年で債務整理を行うことになったら…考えただけで辛く寂しい話だと思いますよね。

 
債務整理は行いたいのですが、家は手放したくないことで、無理して住宅ローンと借金返済を続けている人も少なくありません。

 

このような状況においても個人再生はその効力を発揮します。つまりマイホームを手放さないで個人再生を行う方法があるのです。

 

これは「住宅資金特別条項(住宅ローン特例)」と呼ばれる制度で、個人再生の中から住宅ローンのみを除外して、その他の債務整理を行う方法です。

 

 
つまり住宅ローンは今まで通り払うことで、自宅を担保として取り上げられてしまうことを防ぐのです。

 
また残りの債務については原則1/5に圧縮されて、3年間頑張れば残りは住宅ローンだけになります。

 

住宅ローンを提供している銀行には都合のよい話なのですが、マイホームを手放したくない債務者にとっても大変嬉しい制度だと言えます。

 

ただしこのように都合のよさそうな住宅資金特別条項を適用させるためには、厳格な条件が定められており、それに合致しないと利用することはできません。

  • 該当債務が住宅資金貸付債権である
  • 住宅資金貸付債権が法定代位で取得されていない
  • 住宅ローン会社以外の担保が設定されていない
  • その他

住宅ローンとは家を新築したり、中古住宅を購入したりする時に利用しますが、近年では増築や大規模リホームで使われることも多くなっています。

 
このように住宅資金についての利用でなくては、住宅資金特別条項は適用されません。

 

また住宅ローンの債権が、銀行などから住宅ローン保証会社に移行した後も適用はできなくなります。

 

 
さらに住宅ローンを払っている自宅に、それ以外の債務の担保が付いていつ場合も同様に適用できません。

 

これら以外にも条件がありますので、住宅資金特別条項を利用する場合には十分な下調べが必要になることを覚えておきましょう。

 

個人再生のデメリットを考えてみよう

 
場合によっては住宅ローンが残っている自宅を守ることができる個人再生ですが、実際に行うことで発生するデメリットはあるのでしょうか?

 
【個人再生におけるデメリット】

 

  • 官報に記載される
  • ブラックリストに登録される
  • 暫くは借り入れやクレジットカードが作れない
  • 弁護士、司法書士への費用が発生する
  • その他

まず裁判所を仲介する個人再生では、その内容が官報に記載されます。

 

 
記載されるタイミングは「手続きの開始」「意見聴取、書面決議」「個人再生認可、廃止」の3つです。

 

しかし実際に官報など見ている人は、銀行などの金融機関や税務署くらいのもので、一般人が見ることなどありませんよね。

 

 
官報に載ることで近所に噂が広まるなんて話は気にしなくても大丈夫です。

 

官報の記載は問題ありませんが、ブラックリストの登録はちょっと厄介です。ブラックリストは情報信用機関が登録しているもので、個人の信用状態を会員の金融機関に公開します。

 
これに登録されると新たな借入はもちろん、クレジットカードも作れなくなってしまいます。

 

 
信用情報機関はいくつかの会社があり、会社によって5年から長くて10年間その記録は残ります。

 

ブラックリストに登録されると社会生活で不便な面も出てきますが、得るものも大きいので仕方がないことと諦めるしかありませんね。

 

マイホームに住宅ローン以外の抵当権が設定される前に個人再生を

 
個人再生を効果的に行うには申請するタイミングが大切です。

 

 
マイホームを守りたいのに住宅ローン以外の抵当権が設定されていては、住宅資金特別条項が使えずにマイホームを手放なすしか方法はなくなります。

 

 

そうならないように貸金業者が「自宅を抵当にお金を貸しますよ」と言われたら、その時が個人再生を考えるポイントかもしれません。

 

手続きが難しい個人再生は自分で行うことは困難で、弁護士や司法書士を利用することが一般的です。

 

 
そうなると費用も掛かり、それがデメリットになってしまいますが、それ以上に大きな効果をもたらせてくれるでしょう。

 

 

「人生の救済措置」それが個人再生なのです。