最近テレビを見ていると「○○弁護士事務所」や「△△司法書士事務所」などのCMを見かけることが多くなりました。
「なんの広告だろう?」とよく見てみると、なんと借金返済について案内ではありませんか。
「弁護士もコマーシャルを流す時代なんだなぁ…でも何の宣伝なんだ?」と思わず口にしてしまったのです。
ちょっと興味が湧いたので詳しく見てみると、そこには「過払い金」「返還」などの美味しそうなキーワードが並んでいるではありませんか。
そう、これは借金を整理することで、債務の圧縮をしたり、払いすぎたお金を取り戻したりする「任意整理」を宣伝していたのです。
借金をしているのにお金を貰えるなんて…こんな美味い話があるのでしょうか?
もしかしたら新手の詐欺かもしれません。任意整理…過払い金請求、ちょっと調べてみましょう。
話し合うことで借金を整理するのが任意整理
借金をすると大抵は契約書にサインをするのですが、そこに記載されているのが金利です。
金利は債務に対しての利子を生む根拠であり、お金を借りた人(債務者)は元金と利子を合わせて返済を行わなくてはいけません。
しかし、借金が少ない間は問題なく返済できても、少しずつ増えて行くと月々の返済に困ってしまうことも出てきます。
特に臨時の出費が出てくるとそれだけで借金返済が滞ってしまい、債権者から様々な連絡や通知を受けることになりかねません。
またこのような事態を防ぐために新たな借金をすることもあり、最悪では自転車操業に陥ることも珍しくないことです。
そこで借金は返済したいのだけど、どうしてもこのままでは破綻してしまう恐れがある場合に任意整理を検討するのです。
任意整理とは「話し合いによって利息を軽減したり、債務を圧縮したりする債務整理」のことで、つまり「何とか借りた元本は返すので、利子は何とかならないでしょうか?」と相談を持ちかける整理手段だと考えて下さい。
任意整理はあくまで任意なので、裁判所などの公的機関は一切関与しません。
また話し合いも強制ではないので、債権者、債務者共に断ることができます。
このように一見して強制力もなく依頼しても断られてしまいそうな任意整理ですが、実は一定の債務者にとっては大きな力を発揮するのです。
任意整理の基本は利子をなくして元本のみの返済
借金の返済を滞らせてしまう主な原因として考えられるのが、「利息(利子)」による負担増です。
つまり毎月定額を返済していても、その多くは利息分にしかならず、返済が長期になることで債務者が疲弊してしまうのです。
そこで任意整理ではまず利息についての減額及び、免除を相談します。
債務が元本だけになると月々支払ったお金は全て元本返済分にあてられるので、計画的な返済ができるようになります。
また月々の返済額も少なくすることもできるので、生活に負担をかけることがなくなります。
債権者としてもこのまま放置すると、債務者が破綻してしまう恐れもあることから、利息を放棄してでも確実に元本を回収したいと考えるのです。
「少しでも返済額を減らしたい」債務者と、「破綻されて元本の回収ができない事態は避けたい」債権者の思惑が話し合いとなって任意整理を行うのですね。
しかし、債権者の中には「絶対に利息は減らしません!」とか、「破綻するならやってみろ!」などと任意整理を拒否する業者もあるでしょう。
テレビCMでは簡単にできるイメージですが、現実には断られるようなことはないのでしょうか?
任意整理においてのポイントは金利の仕組み
近年、任意整理が注目されている最大の理由は、「過払い金の返還請求」にあります。
実は日本にはお金を貸す時に発生する金利についての法律が2つあることを知っていますか?
- 利息制限法
- 出資法
利息制限法はその言葉のまま「利息の上限を定める法律」です。
「お金を貸す場合にはこれ以上の金利を取ってはいけませんよ」との法律で、本来全ての借金に適用されなくてはいけないものです。
それに対して出資法は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」であり、事業などに出資する際に借りるお金の上限金利を定めた法律になっています。
もちろん借金の理由には様々なものがありますが、どれが家庭内消費でどれが出資に使うかなんて解らないですよね。その意味で本来であれば同じ金利であるべきなのに、数年前までは大きな差が両者にはあったのです。
【利息制限法の金利(10万円~100万円未満)】 : 18%
【2010年以前の出資法の金利(10万円~100万円未満】 : 29.2%
つまり債権者である金融会社は、利息制限法があるにも関わらず、出資法を根拠して金利を定めて高額な利息を得ていたのです。
明らかに利息制限法を無視した運用であり違法との指摘も多かったのですが、利息制限法には罰則もないことから「グレーゾーン金利」として野放しになっていた状態が長く続きました。(厳格には違法)
しかしこのグレーゾーン金利も解消される日がやってきます。
2010年に出資法の改定が行われ、利息制限法と同じ金利に定められました。
この改正により金利は統一され、上限は10万円~100万円未満で18%となったのです。
任意整理でお金が貰えるなんてこと…あるの?
金融業者は出資法を根拠に営業を行っていたのですが、その根拠が崩れてしまいました。そのことで今まで利息制限法に違反して貸付を行っていた行為自体に違法性が生まれてしまったのです。
つまり、利息制限法の上限である18%ではなく、出資法の上限である29.2%で貸付を行っていた業者は債務者に返金をする必要が出てきました。
つまり過去に遡って計算をすることで、支払った金利の一定部分が返却される状況が生まれたのです。
この返却されるお金のことを「過払い金」と呼び、任意整理は過払い金を計算して返却の手続を行う作業も担っているのです。
過払い金は借金の返済を長く行っているほど、返却されるお金も増える傾向にあります。
また低金利よりも高金利で借りていた方が、金利差が大きいので戻りも大きくなります。
その結果、任意整理を行うことで過払い金が確定し、それを現在残っている元本と差し引きした結果、「元本がなくなり借金ゼロになった」「借金がゼロさらにお金が戻った」などの効果が生まれた人も大勢います。
昭和の終わり頃には、大手の貸金業者でも年利43%もの金利を取っていた時代がありました。
100万円借りて金利が年43万円ですよ。返せるはずがありませんよね。
出資法の改定は金利を下げる効果だけではなく、債務整理における任意整理をやりやすくした効果もあったのです。
こんなに効果のある任意整理でもデメリットがある
このように素晴らしい効果のある任意整理ですが、メリットがある以上デメリットも覚悟しなくてはいけません。任意整理におけるデメリットを以下に紹介します。
- ブラックリストに掲載される
- 収入が確保されていないと不調に終わる
- 借金が無くなることはない
任意整理は債務を整理しますが、その中で債権者に損害を与えることにもなります。
そこで債権者はその内容を信用情報機関へ報告して、情報を登録するように依頼するのです。
いわゆる「ブラックリスト」ですが、これに記載されてしまうと、5年程度は新たなローンが組めなくなることを覚悟しなくてはいけません。
また現在使用しているクレジットカードを解約されたり、新たなカードが作れなくなったりすることもあります。
ブラックリストへの登録は任意整理で約5年であることから、それまでは金融取引に支障が出ることを覚えておきましょう。
まぁ借金で困っているのだから、暫くは借金ができないくらいが丁度良いかもしれませんね。
また任意整理はあくまで両者の話し合いなので、合意できない場合もあります。
特に債務者に定職がなく収入が見込まれないケースでは、「せっかく任意整理を行っても履行できないでしょう」との理由で不調に終わることがあります。
任意整理を申し込む以上、合意内容は必ず履行する覚悟が必要です。「とりあえず…」では債権者を譲歩させられないので注意して下さいね。
債務整理で借金は無くならないことを頭に入れておく
債務整理は「自己破産」とは違い、借金がゼロになることはありません。その意味では劇的な債務の減額は望めない可能性があります。
特に出資法が改定されて以降の借金では、過払い金が生まれることは少なく、それによる元本の減額は見込むことができません。
しかし任意整理を申し込むことで、金利が半分になったり、免除されたりすることもあります。
そうなると月々の負担が数万円単位で軽減するかもしれません。自分の債務状況とデメリットをよく考えてから、任意整理を行うか検討するのが大切です。
誰もが任意整理でお金が貰える訳ではない…覚えておきたいポイントですね。