「いざとなれば破産するから大丈夫だよ」こんな安易な気持ちで借金をしている人がいます。
債務整理の中でも自己破産は裁判所に申し立てを行うことで、最終的に借金の免責を得る制度です。
免責とは「責任を免れる」意味で、すなわち借金を返す義務関係が無くなることになります。
500万円でも5000万円でも負債の額に関わらず、利用できる自己破産制度。
中にはこの制度を当てにして借金を繰り返している不届き者もいるようです。
しかし自己破産は無条件で免責を得られる制度ではありません。「免責不許可事由」と呼ばれる条件があります。
自己破産とは誰もが利用できる法律手段ではありません。適正な審査基準を元に自己破産を認めるかどうかの決定を行います。
お金を借りた人が自己破産で全て逃れてしまえば、キャッシング制度そのものが成立しないからです。
自己破産は免責が決定されなくては意味がない
借金の返済に行き詰まることで自己破産を考えることがありますが、単に破産を行うだけで借金が無くなることはありません。
簡単な自己破産の流れを紹介します。
- 裁判所に自己破産と免責の申し立て
- 破産審問
- 破産手続開始決定及び同時廃止決定
- 免責審問
- 免責許可決定
- 免責許可確定
まず裁判所に自己破産&免責したい旨の申し立てを行います。
そして「これ以上返済が不可能で、さらに処分する財産等もない」と確認されることで、破産手続き開始決定と同時廃止決定が認められます。
大きな財産がない場合では、ここまでで自己破産の手続きは終了です。
しかしあくまでここまでの手続きは、債務者が債権者に対してこれ以上支払いができない状態だと裁判所が認めたに過ぎません。
つまり自己破産が認められたからと言って、借金は無くなってはいません。借金を無くすためには免責の決定を受ける必要があります。
自己破産が決定しても免責が受けられないケースがある
自己破産が認められたからと言って、安心してはいけません。
破産手続き開始、同時廃止決定の時点では、まだ借金が無くなった訳ではなく、あくまで破産が認められたにすぎないからです。
そこで免責許可を求める必要があるのですが、実は破産が決定したからと安心してはいけません。
なんと「免責不許可事由」と呼ばれる条件に該当する破産者は、せっかく破産したのに免責が認められず借金が無くならないことがあるのです。
「嘘でしょう!破産したのに免責が認められないなんて…」こんな状況に陥らないためには、自分の借金が免責不許可事由に該当するのかを事前に確認しなくてはいけません。そこで免責不許可事由で注意したい条件を説明します。
自分の財産を隠したり壊したりする行為は免責できない
自己破産は基本的に全ての返済方法に行き詰ったことで行う債務整理です。
つまり生活費以外のお金や財産は、持ち合わせていないことが条件となります。
しかし中には高価な車や、有価証券、宝石などを持っているにも関わらず、それらを隠して破産しようとする人がいます。
また自己破産を行うことを決めてから、慌てて財産を売却して売却金を隠してしまうこともあります。
このように本来であれば破産時に債権者に均等に分配されるべき財産を、不当に隠したり処分したりすることは免責不許可事由に該当します。
つまり免責できないことになるのです。
また「債権者に取られるくらいなら壊してやる」と価値のある美術品を破壊してしまう行為も、同じく免責不許可事由になりますので注意が必要です。誠実に対応することが大切ですね。
隠し財産があったり、なんらかの不正を行おうとしている方は絶対に辞めておきましょう。
パチンコや競馬での借金は免責できない可能性あり
パチンコ屋や競馬などのギャンブルでは、ついついお金を浪費してしまい、それが大きな借金となることがあります。
しかしこのような賭博などの射倖行為による債務は免責の対象となりません。
特にギャンブル目的で高利のサラ金などから、借金を繰り返すような状況は、いくら生活が苦しくても免責不許可事由に該当します。
また違法な賭けごとによる借金も同様なので注意して下さい。
異常な浪費癖がある人は免責が許可されないかも
近年「買い物依存症」など言葉を耳にしますが、クレジットカードを使用するこのような行為において、免責が許可されないケースがあります。
特に収入がないにも関わらず、クレジットカードで浪費を繰り返す行為は、元々支払う意思が無いとの判断が下されます。
そうなると故意(計画破産)の可能性も疑われることから、免責不許可事由になるのです。
浪費癖のある人は自己破産をしても免責されない可能性があるので覚えておきましょう。
一定の債権者だけに便宜をはかると免責できない
自己破産を申し立てる時点では債権者の中にも、様々な会社や人がいると思います。
金融業者以外にも友人や知人、出入りの業者(酒屋など)などもあるかもしれません。
昔から付き合いのある出入り業者とは、親しい人間関係であることも多く、「なんとか破産の影響を与えたくない」と穏便に済ませたいと考えてしまいますよね?
「これからの人間関係もあるので、何とか彼らだけ払ってしまえ」…人情的には解りますが、それをやってしまうと免責不許可事由に該当します。
つまり自己破産で一定の債権者を優遇することは禁止されており、全ての債権者を平等に扱わなくてはいけません。
こそっと払っている事実を他の債権者が見つけるとどう思いますか?
「払えるんじゃないか!」と思いますよね。
どんなに事情があっても、自己破産を選んだ以上、全ての債権者を平等に扱うことを理解しましょう。
常に正当な行動をしていなければ自己破産の審査が通る事はありません。
FXなどの金融取引の借金は免責されない
近年では様々な金融取引が生まれており、中でもFX取引(外国為替証拠金取引)は自宅のパソコンから簡単に外貨の取引ができることから人気を博しています。
中には1年で数億も儲けたと豪語する人もいますが、多くはお金を失うだけで終わっています。
このような金融取引を高利で借り入れして行っているケースは免責不許可事由に該当します。
裁判所的にはFXをギャンブルと見なすことが多く、パチンコ、競馬などと同等に扱います。また株式投資や先物取引においても同様だと考えましょう。
返済できる余力があると判断されると免責できない
破産者の状況を確認したところ、収入もあるし生活もそこまで圧迫していないと判断されることがあります。
特に勤務先が大手で給与やボーナスも多い人は、免責しなくても返済が可能と判断されるのです。
この判断は他の債務整理と同じく「3年で返済可能か?」が一つのポイントになっており、この基準に合致してしまうと免責ができなくなります。
このような状況では自己破産ではなく、他の債務整理を考えることも必要かもしれません。
自己破産には7年の壁があることを知れ!
多くの人が「自己破産は一生で一度しかできない」と思っていますが、実は2回でも3回でも行うことは可能です。
しかし、無制限でそれを許してしまうと、「借金をしては破産する」このような不届き者も生まれてしまうので、ある条件を付けています。
それが「7年の壁」であり、一度免責を受けたら、7年間は自己破産を申し立てることができません。
つまり免責も貰えないことになります。免責決定を受けてやっと借金から開放されても、気が付けばまた多額の借金。
よく聞く話ですがこのようなケースでは7年経たないと新たな免責を得ることはできません。
悪質な業者にはこの制度を利用して、わざと破産者に融資を持ちかけることがあります。
免責できるのは7年に一度と覚えておきましょう。
自分が免責不許可事由にあたると諦めるな!
自分の借金が免責不許可事由に該当するからと言って、自己破産を諦めてしまう人がいますが、実際にはこの制度で免責が得られない人はほんの少数です。
その多くが財産を隠したり、裁判所に嘘の申告をしたりするケースで、多少のギャンブルで免責が下りないことはありません。
大切なのは嘘をつかないことだと理解して下さいね。
今回紹介した以外にも免責不許可事由はいくつかありますが、その多くが誠実に対応していれば該当することはなく、免責の決定を妨げることはないでしょう。
結局は悪い事でごまかそうとしたり、本来自己破産をしなくても借金返済できる人は辞めておくべきってことなんだね。
そういう事だね。自己破産制度が出来てからもう随分経過するけど、これまでに不正がされたケースは当然対策もしているし、未然に防ぐ努力も怠っていないという事ですね。