生活保護ってどんな制度かよくわからないな。
学校やどこかで学ぶ制度でもないけど、日本において生活保護を知っておくことはすごく大切な事だよ。
この記事では生活保護の制度について詳しく説明をしていくね。
どんなに頑張っても最低限の生活ができないことがあります。
病気や怪我で働けない、肉親の介護で動けないなど理由は様々ですが、全くお金が無くなり食べる物さえ買えない状況です。
このようにお金が無くなると日常生活が正常に送れなくなり、その状態が続くと命を落としてしまう可能性もあるでしょう。
そこで日本には、そのような状態を防ぐ目的で「生活保護制度」があります。
生活保護は日本国民の基本的人権を守る制度
日本の憲法には基本的人権が保証されており、国民は「文化的で最低限の生活」を送る権利があります。
つまり日本人はどんなにお金が無くても、最低限の生活は国が面倒みてくれることを保証されているのです。
生活保護はこの憲法で謳っている、文化的で最低限の生活を維持するためにある制度だと考えて下さい。
しかし生活保護を実際に受けるためには、厳しい基準や審査があるのも事実。つまりお金がないからと言って、誰でも簡単に利用できるものではありません。
あくまで最終手段としてのセーフティーネットであると理解しましょう。
お金がない=生活保護ではなく、適正な審査を元に生活保護の認可がされるという事ですね。
生活保護は厚生労働省が管轄している
生活保護制度は厚生労働省が管轄している制度であり、同省のホームページにある生活保護の説明には「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し…」との記載が見られます。
参考:厚生労働省の生活保護制度
ここに記載されている「資産」「能力」とは何を意味しているか解りますか?
資産とは「自分で持っている資産」であり、自宅や車、貴金属類などの売却できる資産を示しています。
また能力等とは働いてお金を稼ぐことを指していたのです。
つまり厚生労働省は「財産を処分しても、働こうと頑張ってもなお生活に困っている人に対して、生活保護を検討します」と言いたいのですね。
「まずは財産を処分!働きましょう!それができないなら面倒を見る」乱暴に解釈するとこのようなところでしょうか?
そしてこの条件を審査するのが各自治体の福祉事務所や町村役場になります。
結局のところ働き手がいないと税金収入が減り、日本の経済が回りません。
全員が働いていない状態でお金を支給する事は不可能であり、最後の砦として使う他ありません。
生活保護が貰えるまでの流れを見てみよう
生活保護は大切な税金の中から生活費を貰う制度なので、運用も厳格に行われる必要があります。
ただし生活の困窮が激しい場合には、スムーズに対応できなくては命の危険も出てきます。
生活保護の許可がどのように行われているのか、その流れを見てみましょう。
【1.相談窓口で生活保護の相談】
申請を行う前に必ず生活保護の相談を受ける必要があります。
相談は福祉事務所の相談員か、町村役場の担当者になりますが、現在の状況を鑑みて生活保護に該当するかの事情聴取が行われます。
現在の状況を詳しく説明する必要があることから、「働けない理由」「現在の状況」などを予めまとめておく必要があります。
また預金通帳や病気の診断書なども持参する方がよいでしょう。
実際にはお金もなく追い込まれている状態なのに、「なんとか大丈夫です」などと強がることは禁物。
隠さないで実際の状況を話すようにして下さい。
【2.生活保護の申請】
相談の結果、相談員が必要を認めると、生活保護の申請を行うことになります。
申請が行われると各自治体は、申請者の状況確認に入り生活保護の必要性を精査するための調査を行います。
この時点で調査される項目は以下の通りです。
- 資産調査(預金、不動産など)
- 扶養者の有無と援助の可否
- 就労状況
- 家庭内調査
- その他
まずは資産の有無を調査します。
ここで言う資産とは「現金化しやすい資産」であり、売却することでお金を得ることができるものです。
特に担保設定のない持ち家などは、売却することである程度の収入が見込まれるため、先に売却を勧められるケースもあります。
また子供や親など法的な扶養義務者がいる場合には、援助ができないかを確認することも行います。
そして特に重要なのが「就労状況」で、ここでは働けない理由を確認します。
働けない理由として「病気で寝たきり」「高齢で働けない」などがありますが、近年では「高齢者の介護で働けない」などのケースが増加しています。
生活保護の調査では就労に関する調査は最も大切で、単に「働きたくない」「人間関係が嫌」…このような人はこの調査で不許可になります。
つまり精神的な状態で働けない事を証明するのは難しいと言えるでしょう。
生活保護の調査では実際に自宅に出向き、家庭内を調査することも重要です。
自宅を見ることで、生活がどのくらい切迫しているかが解ります。緊急度を計る上でも大切な調査です。
【3.生活保護の受給決定】
いくつかの調査の結果、生活保護の支給が妥当だと判断されると、生活保護の受給が決定されます。
金額は家族構成や状況、また地域によっても違いがありますが、普通に生活できる最低限のお金を貰うことはできます。
生活保護は8つの扶助から成り立っている
それでは実際に支給される生活保護費はどのような仕組みになっているのでしょうか?
実は8項目からなる「扶助」の合計が支払われる仕組みになっています。
- 生活扶助
- 教育扶助
- 住宅扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
【生活扶助】
生活に必要なお金を扶助するのが生活扶助です。具体的には飲食費や水道光熱費及び衣服費など、生活を送る上で必要な費用が含まれます。
【教育扶助】
子供が教育を受けるための扶助で、学用品などを購入するために使用します。
基本的には義務教育までで、定められた実費が支払われることになります。
【住宅扶助】
住宅扶助は生活する為の家賃を扶助するもので、家賃以外にも「屋根の修理」「窓の修理」など住居の補修費用も該当します。
【医療扶助】
医療扶助は現物支給が原則となり、病気やケガで治療が必要になった場合には、指定病院において無料で治療を受けることができます。
【介護扶助】
要介護や要支援認定を受けている人に払われる扶助です。
原則として生活保護法指定介護機関で利用する、介護サービスの費用を現物支給します。実際の介護サービスの種類によっては制限があります。
【出産扶助】
出産における費用を扶助します。費用は実費分を現金で支給されます。
【生業扶助】
自営業などの生業での仕入や資材、器具などを購入するための扶助です。
また就労するための技能習得を得る費用としても利用できます。
教育扶助は原則として義務教育までを対象としており、高校は技能習得の場と考えることから、費用は生業扶助が適用されます。
【葬祭扶助】
葬儀を行う際に必要な費用を扶助します。
生活保護を受けると収入申告が義務づけられる
生活保護はあくまで収入が見込まれない状況で行われる制度なので、収入が入ると支給の減額や停止になります。
そこで生活保護者世帯の収入は定期的に申告することが義務付けられています。
生活保護は個人ではなく、世帯に支給されているものですから、家族の中で収入を得ることになると世帯収入が増えたと認定されます。
特に子供がアルバイトで得た収入についても、申告しなくてはいけないので注意しましょう。
定期的な収入申告において虚偽の内容が含まれていた場合、保護を打ち切られたり、保護費の返還を求められたりすることもあります。
【申告もれで注意したいポイント】
- 仕事が見つかり収入を得た
- 子供がアルバイトでバイト代を得た
- なかなか売れなかった不動産が売却できた
- 親戚などから援助を貰った
- 宝くじに当選した
- 各種保険から保険金を得た
- その他
特に就職し収入を得ているにも関わらず、申告しないで生活保護受け取っていると、詐欺で刑事事件にも発展することがありますので注意しましょう。
最近のニュースで生活保護をもらう必要が無い人もお金をもらっていたケースが散見されます。
これらの実態により今後さらに生活保護支給の審査は厳しくなる事でしょう。
生活保護の不正受給は絶対にバレることを理解しよう
生活保護は誰もが安心して生活できるための重要な制度ですが、それを悪用して受給する不届き者を生む原因にもなっています。
「不正受給」…聞いたことがあると思いますが、本来生活保護を貰う資格がないにも関わらず、虚偽の申請により受給を受けていることを言います。
例えば「生活保護を受給しているにも関わらず、高級外車を乗り回している」、「大きな自宅に住みながら生活保護を貰っている」「仕事で収入があるにも関わらず生活保護を貰っている」などが不正受給の代表例です。
一昔前までは生活保護の調査が甘く、また定期的な収入調査もいい加減に行ってきた地方自治体が多く、それに付け込む形で不正受給が横行していました。
しかし近年では自治体の財政難や国民感情などから厳格な運用が求められるようになっています。
不正受給を近所の住人から通報される例も少なくありません。これは国民の不正受給に対する嫌悪感の高まりを象徴しており、実際の検挙件数も増加しています。
どんなに隠してもいつかはバレる不正受給。絶対に不正受給は行わないようにしましょう。
借金があっても生活保護を受けることはできるか?
「借金がある人は生活保護を受けられない」このような内容を説明しているサイトもありますが、実際には借金と生活保護は別の問題なので関係性はありません。
しかし生活が苦しい人は最初に借金をしてやりくりすることが多いので、生活保護申請をする時点で一定の借金があることは珍しくはないでしょう。
また生活保護の相談を行う際には、必ず借金の有無や総額を聞かれることから、思わず嘘を言ってしまうこともあります。
しかし、借金の有無と生活保護は制度的に関係ないので、そんなに心配することはありません。
ただし、2つのことには注意しなくてはいけません。
【生活保護を受けたら新たな借金はしない】
せっかく生活保護が出たにも関わらず、まとまったお金が欲しくて新たな借金をすることがありますが、これは基本的に行ってはいけない行為です。
特に法的に規制されている訳ではありませんが、新しい借金で得るお金は収入と見なされるところがポイントです。
つまり新しい収入と見なされると、生活保護費がその分減額されてしまうのです。
借金をして生活保護費が減額になっては、やっと立て直された生活も崩れてしまうかもしれません。
また生活保護費を当てにした悪質な貸金業者もいることから、どんなに上手い話があっても借金は止めておいた方がよさそうですね。
【生活保護費で借金返済を行わない】
生活保護費はあくまでも生活を維持するためのセーフティーネットとして支払われています。
法的な規制はないことから、生活保護費で過去の借金を返済しても問題はなさそうですが、それでは生活が崩れてしまう可能性もあります。
また福祉事務所に知られると返済に当てているお金を余分な費用と認定して、生活保護費の減額を行われる可能性もあります。
あくまで生活保護費は最低限の生活を維持するために支給しているので、過去の借金を返済するための利用は想定されていません。
生活保護費での借金返済は止めた方が無難ですね。
生活保護を受ける前には身綺麗にすることが重要
生活保護の相談をしている中で、過去の借金の話が必ず聞かれます。そしてそれら債務をどのように処理するかが、重要なポイントになるのです。
生活保護の制度と借金は全く関係のないものですが、先に説明した通り生活保護費は借金を返済するものではなく、また新たな借金を行うことも難しくなります。
そこで生活保護を受ける前には債務整理を行うことが重要です。
債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」がありますが、自己破産を除いた全てで債務の返済が必要になります。
その意味で自己破産であれば債務の返済義務が消滅することから、生活保護費を全て生活に充てることができるようになります。
生活保護の相談の段階で借金がある人には、自己破産を勧めてくる担当者がいますが、よく話を聞いて必要ならば検討するようにしましょう。
自己破産を行うためには弁護士費用もかかりますが、法テラスでの無利子貸付では「生活保護中は無利子で支払いも免除」となっており、安心して利用できます。
自己破産の徹底解説書!デメリット&メリットの比較総まとめ
費用は心配しないで身綺麗にして保護費を受けるようにしたいですね。
地域によっては申請までが遠い場合も
生活保護の相談に行っても、様々な理由から申請にも辿り着けないケースが頻発しています。
中には相談に行ったにも関わらず担当者に断られ、数カ月後に餓死した事件もあります。
この事件は生活保護を受けることの難しさと苦労を表しているのではないでしょうか?
しかし生活保護は国民の権利であり、憲法で保障している基本的人権です。たった一人の役人の考え方で、方向性が決まってしまうものではありません。
自分の状況が生活保護を受ける条件に合致している場合は、どうどうと申請を行うようにしましょう。
先に保護の相談を通過しないと、申請書さえ貰えない自治体があるそうですが、これは完全に違法です。
堂々と「生活保護の申請を行いたいので申請書を下さい」と申し入れしましょう。それでも貰えない場合は、弁護士や生活困窮者の支援団体に相談することも大切です。
今でも偏見の多い生活保護ですが、その原因は一部の不正受給者によるものなので心配することはありません。
近所の体裁なんて考えること自体がナンセンスです。
お金がなく生活に困窮している人は行き詰まる前に、ぜひ制度を理解して正しく生活保護を利用して下さいね。
生活保護の定義を今回の記事を読む事で理解できた気がするよ。
不正をすればバレる社会構造であり、本来支給されるべき人だけにお金を回していかないと制度そのものの存在意義も疑われかねないですね。
[…] また持ち家があっても生活状況が貧困状態にあり、生活保護の要件に合致しているにも関わらず、「持ち家があるでしょう」と申請を断る福祉事務所の相談員もいます。 この両者共に思い違いで誤った判断を下しており、生活保護の都市伝説に流されてしまっているようなものです。 あくまで生活保護と持ち家の所有は別の問題と考えて、セーフティネットが必要と感じたら堂々と申請するようにして下さい。 生活保護制度の仕組みをわかりやすい解説!生活保護の基礎と概要 […]