知恵博士知恵博士

自己破産の手続きが完了しても、審査に合格するかどうかは100%の保証はありません。

借金の返済に行き詰まり、最後に辿り着く債務整理が「自己破産」です。
 
自己破産は裁判所で破産の決定を受け、免責を勝ち取ることで全ての債務が消滅する究極の債務整理と言われている制度です。

 

しかし、免責を勝ち取るためには、自己破産における「破産審尋」と、免責における「免責審尋」と呼ばれる面接をクリアしなくてはいけません。
 
場合によっては破産も、免責も得られなくなる審尋。審尋を上手に通過するにはどうすればよういのでしょうか?
 

審尋とは裁判所が行う面接のようなもの

 
自己破産は債務者が借り入れした債務を全て消滅させることができますが、そうなると貸付けした債権者は大きな損害を受けてしまいます。 
その意味で自己破産は債務整理の中でも特に慎重に行う必要がある制度です。
 

あまりに簡単に自己破産を認めてしまうと、債権者としては納得することもできずに、後々トラブルに発展することも考えられます。
 
そのような感情に配慮する形で裁判所が債務者に聞き取り調査を行うのが審尋です。
 

審尋は裁判官が債務者に直接質問を行うことで進められ、「この債務者は本当に破綻状態にあるのか?」
 
「自己破産を認めることでやり直しはできるのか?」
などを考慮して最終決定を行うのです。
 

反対に審尋の際に問題が出た場合には、自己破産も免責も認められないこともありえます。
 
自己破産で行われる審尋には、自己破産の決定を決める「破産審尋」、免責を決める「免責審尋」がありますが、これらはどのように行われるのでしょう。
 

破産尋問では借金の理由が主な焦点になる

 
自己破産の申し立てを行うと、まず破産尋問の日程が決まります。
 
自己破産の制度では破産が認められても、それはあくまで破産者として認定されるだけなので、借金は消滅しません。
 

あくまで「債務の返済ができない状態」を裁判所が認定するに過ぎないのです。
 
しかしこの破産決定が認められないと、免責を得ることができないことから、免責を受けるための第一段階と考えてもよいでしょう。
 

このことから破産審尋ではまず債務者の残債務と、債務を負った理由について質問されることが多くなります。

  • 債務の種類とその額
  • どのような理由で債務を負ったのか?
  • なぜ返済できないまで膨らんだのか?
  • 現在の状況
  • その他

自己破産では破産の申し立てを行った時に、現在残っている債務の所在と額を全てリスト化して裁判所へ提出しています。
 
破産審尋でまず裁判官は、この債権者リストと額が正確なのかを尋ねることになります。
 

特に他の借金が隠されていないかは、重要なチェックポイントで、記載漏れがあったり、隠してあったりすると自己破産が認められないことになります。
 

債権者リストは弁護士や司法書士などの代理人が作成することが多いのですが、漏れがないように債務者自身でチェックするようにしたいですね。
 

次に債務を負った状況を聞かれます。
 
例えば「収入が減ることで生活費として借金を負った」「病気で働けなくなり借金した」などが理由として多いのですが、実際には「ギャンブルで負けた」「遊興費に使った」などであることも珍しくはありません。
 
ここで注意したいのが自己破産の申し立て時に提出した書類に書かれている内容との不一致を避けることです。
 

申し立て時に提出した書類には「病気による収入減」と書かれていても、審尋では「ギャンブルで使った」と言ってしまうと裁判官は嘘の申し立てをしたと判断します。
 
そうなると自己破産は認められなくなります。
 

予め代理人と相談して提出書類と審尋での回答で不一致が起きないように注意しましょう。
 
これは借金が膨らんだ理由についても同様です。
 

そして現在の状況の説明も大切で、債務によって生活が破綻状態にあることを説明しなくてはいけません。
 
大げさに話す必要はないので、簡潔に現在の状況を説明します。
 

変に嘘を付くと見破られてしまうこともあるので、正直に話すようにしましょう。
 

破産審問の時間は10分から長くても30分程度なので、実際には全てを聞かれることはありません。
 
流れ作業のように同じ質問を繰り返す裁判官もいれば、しっかりと申し立て書類を見て質問する裁判官もいます。
 

裁判官は選ぶことができないので、落ち着いて質問を聞くことが大切ですね。
 

借金の棒引きを決める免責審尋

 
破産審尋が終了し問題が見つからないと「破産開始決定」の通知を郵送で受け取り、破産が認められることになります。
 
さらに免責審尋の日程についての案内も同様に送られてくるのです。
 

免責審尋の目的は「債務を消滅することでやり直せるか?」に尽きます。
 
つまり免責を与えることで、債務者が安定した生活に戻ることができるかが焦点になるのです。
 

そこで大切なのが債務者の「誠実さ」です。
 
「嘘や虚偽の話をしていないか?」「隠している話はないか?」
などを確認し、免責を与えるにふさわしい人物なのかを判断します。
 

また裁判所として免責を認めた後の生活についても確認が行われます。

  • 免責後に安易に借金はしない
  • 保証人にはならない
  • 生活を安定させる
  • 7年間は新たな破産はできない
  • その他

特に一度免責を得ると7年間は新たな破産ができなくあります。
 
悪質業者によってはこの規定を悪用して、借金を斡旋してくることもあります。このような悪質行為に捕まらないように注意喚起してくれるのです。
 

このような流れで免責審尋が進みますが、実際には10分程度で終了することが多く、複数人同時で行われることもあります。
 
そのような免責審尋では個人的な内容は割愛されて、本人確認と裁判所からの注意確認で終了することもあるようです。
 

「免責を許可するから裁判所からの注意事項をよく聞いて下さいね」と言うところですか…。
 

免責審尋も破産審尋と同様に裁判所や裁判官の考え方で、内容にも大きな違いが見られるようです。
 
自己破産が多い裁判所では、1回の免責審尋で10人同時に行うこともあります。これでは流れ作業になってしまいますよね。
 

つい気を抜いてしまいような環境ですが、裁判官の話をよく聞いて質問されたことにはしっかりと返答できるようにしましょう。
 

免責審尋が無事終了するとついに免責許可決定通知が

 
免責審尋が無事終了すると後日、免責許可決定通知が郵送で送られてきます。
 
これで借金が全て消滅し、債権者との関係もなくなることになります。
 

免責が決定する期間は大体1ヶ月~2ヶ月程度なので、その間は気になって仕方がないのですが、免責審尋で特に問題がなければ、自動的に免責許可は得られると考えて結構です。
 
免責許可決定が出されると自己破産の手続きも全て終了となるため、債務者は破産者ではなくなります。
 
よって職業制限がなくなり本籍地の破産者名簿からも末梢されることになります。
 

これが「復権」と呼ばれるもので、要は破産手続きが終了して、一般的な権利を取り戻すことを言います。
 
破産開始決定により破産者となり、免責許可決定で復権となるのでその期間は半年程度かかります。
 

復権がされると全ての作業が終了になります。借金がなくなったのです。
 

破産尋問で嘘がバレたOさんのケース

 
破産審尋、免責審尋共に裁判官が債務者に事情を質問することで、申し立てを許可するか判断します。
 
その意味では裁判官の心象によって、結果にも重大な影響を与えることもあります。

 

ここからは実際に破産審問の経験をしたOさんに登場してもらいながら、話を進めていきます。

 

具体的事例があった方が参考になると思いますので、ぜひご覧くださいね。

 

【破産審問で問題となったOさん】

 

Oさんは多額の借金を持っており、返済ができないことから自己破産を申し立てることにしました。
 
代理人として司法書士に依頼することに決めて、書類を作成してもらったのです。
 

司法書士からも「大丈夫でしょう。免責は許可されますよ!」と力強い言葉をかけてもらい、早速裁判所に申し立てを行ったのです。
 

そして司法書士から「破産審尋の期日が決まりました。
 
申し立て書類をよく頭に入れておいて下さい」と言われましたが、期日までにはまだ時間があるのでついその作業を忘れてしまったのです。
 

破産審尋は心配だったのですが、ネットで調べてみると10分程度で何も聞かれないなどと書かれており、Oさんも徐々に心配が薄れてしまったのです。
 
そしてそのまま破産審尋の当日がやってきました。Oさんは結局、申し立て書類をサラッと見ただけで、深くは見ていません。
 
司法書士からも審尋前に確認されたのですが、「大丈夫、見ました」と嘘を言ってしまいました。
 
そして破産審尋が開始されたのです。
 

裁判官からは借金のリストにある業者の確認を求められました。
 
しかし、大野さんは自分がどのくらいの借金があるかを正確に理解していませんでした。
 
「はい」「はい」と言うだけで、裁判官も少し苛ついたように「自分の債務ですよね」と声を荒らげます。
 

さらに借金の理由について質問が出ます。実はOさんの借金の理由はパチンコなどの交遊費が主な理由でした。
 
しかし申し立てに記載した理由には「仕事の収入が少なったことによる生活費の借り入れ」と記載されていたのです。
 

確かに全てがパチンコ代ではなく、生活費として借り入れた部分もあったので、間違いではありません。
 
司法書士はこの点を鑑みて、免責の通りやすい理由を上げていたのです。
 

しかしOさんはこの点がよく理解していなかったようです。裁判官の質問に「はい、パチンコで負けてしまいました」と話してしまいました。
 

裁判官は驚いて「あなたの提出した陳述には生活費と書いてありますが…」と言って、Oさんに詰め寄ります。
 
こうなったらOさんもシドロモドロで、まともに話すことができなくなってしまいました。
 

さらにOさんは「あっスミマセン、生活費です」と話してしまったのです。
 

こうなれば裁判官もギャンブルを追求するしかりません。
 
「どこのパチンコ屋でどのくらい使用したか?」「他のギャンブルはやっているのか?」「違法ギャンブルに関係しているか?」など次々に質問を繰り返します。
 

そして裁判官は静かに話します。「あなたは裁判所に嘘をつきました。
 
あなたの債務の多くはギャンブルであり、生活費によるものは少額です。虚偽の申し立てでは破産を認めることはできません」
 

これが破産審尋の結果になりました。大野さんは自己破産することができなくなってしまったのです。
 

審尋を通過するにはしっかりと予行演習を行う

 
Oさんが破産審尋で失敗した原因は司法書士との連携不足にあります。
 
事前に資料を頭に入れるように言われていたにも関わらず、Oさんは読むこともしませんでした。
 

また当時の打ち合わせにおいても嘘をついて、そのまま裁判官の前に立ったのです。
 
確かにネット上に上げられている、自己破産の体験などを見ると破産審尋は簡単との話が書かれています。
 

しかしそれは裁判官が何も見ていない訳ではありません。ちょっとした矛盾に気が付くことで、深く追求されることもあるのです。
 
そこで審尋を上手に乗り切る方法として大切なのが予行演習です。
 
破産に詳しい弁護士や司法書士であれば、自己破産の申し立てを行った裁判所の特長や裁判官の性格まで知っていることがあります。
 

また各審尋で聞かれる質問やパターンにも熟知しており、予め審尋のシミュレーションを行うのです。
 
同時にシミュレーションを行うことで、債務者の理解度も探ることができます。
 

また審尋当日もしっかりとした受け答えができることから、裁判官の印象もよくなるでしょう。審尋の前には必ず予行演習を行うようにしましょう。
 

質問には誠実に答える姿勢が大切

 
裁判官も人間なので、好き嫌いがきっとあるでしょう。
 
ごにょごにょ話したり、聞き取れない声だったりするとイライラして、「ちゃんと話しなさい!」と怒られることもあります。
 

そうなると心象も悪くなり、聞かれなくても済むところにまで追求が入るかもしれません。
 

そこで大切なのが「誠実に答える姿勢」です。破産審尋ですから明るく笑いながら話してはいけません。
 
真顔で反省の態度を見せて、誠実に受け答えするのです。
 

チャラチャラした話し方で反省の色がないと、「この債務者はまた直ぐに借金をするだろう」と勘ぐられてしまうこともあります。

 
そこで服装も派手でなく落ち着いたものを着て、神妙な態度で裁判官の質問にはしっかりと受け答えするのです。
 
誠実な対応こそが審尋にとって最も重要なテクニックだと理解しましょう。
 

2つの審尋を乗り切って新しい生活を

 
免責を決定する際に行われる免責審尋は、具体的な債務の話は少なく免責決定後の生活について聞かれることがあります。
 
その際に重要なのが「これからは借金をしないで働いた収入で生活する」との強い意思です。
 

また裁判所から様々な注意を受けることになりますが、全てに同意する態度も大切です。
 

「免責から7年間は再度破産することできませんが、大丈夫ですか?」と裁判官から聞かれたら、「もう二度と破産するようなことはしません」と明確に答えるのです。
 

もし同じ質問に「えっそうなんですか?大丈夫かなぁ」と答えたら裁判官はどう感じるでしょう?
 
きっと「この債務者は同じことを繰り返すだろう」と思われるかもしれません。
 

2つの審尋を乗り越えると苦しんでいた借金が全て消滅して、新しい人生のスタートを始めることができるのです。
 
「準備をしっかりして誠実に対応する」…これを頭にしっかり入れて免責を勝ち取ろうではありませんか!
 

自己破産は誠実さと真面目さを伝える事

 
ここまでご覧いただいたように自己破産は弁護士、司法書士に依頼をしたから終了というモノではありません。
 

手続きの中で必ず自分自身が審査をされる立場になる事があります。
 

あらかじめ心の準備、予習、復習をして万全な状態で面接に挑むようにしましょう。

フキッスフキッス

確かに今後も同じような失敗をしてしまいそうな人、反省が見られない人に法律を適用させない事はルールの中で非常に大切な事かもしれないね。

どんな人だって失敗はあるから救済措置は大切で、その中でも反省をしている人に限定を行う。嘘を付くような人には自己破産の効果を持たせないのは自然の流れかもしれないね。

知恵博士知恵博士

嘘は必ずバレるからね。この機会に改めてお金との付き合い方を考えて、二度と借金を背負わない為の対策をしておくことが良いと思うよ。

借金をしない為にはお金の知識、使い方を学ぶ

 

お金との向き合い方は人生を大きく左右します。
 

学校教育では義務教育が9年間もあるのに関わらず【お金】の勉強をする時間はほとんどありません。
 

社会人になり自分でお金を稼ぎ、使う中でお金の持つ特性、怖さなどを学んでいく必要があります。
 

貯金をする事の大切さ、浪費癖を辞める、ギャンブルの意味の無さ、投資の効果など。
 
お金にはあらゆる側面で使い方によってその人の人生を変えてしまうほどの力を持っているのです。