自己破産って結局は自分で出来ない場合には弁護士、司法書士に依頼する事になると思うけど、どっちお得とか?損とかあるのかな?
自己破産を決める前に一番気になる事が相談場所ですよね。弁護士と司法書士を比較して双方のメリット、デメリットを説明していきますね。
実際に弁護士か司法書士どちらに相談を迷っているSさんの事例
「もう駄目だ!払えない」Sさんは思わず声を上げてしまいました。
実はSさんには多額の借金があり、毎月ギリギリの生活の中で何とか返済を続けていたのです。
しかしそれも限界を迎えてしまいました。毎月の収入ではもう支払えない状況になっていたのです。
翌日、友人から債務整理を勧められたSさんは、自己破産を決断することにしました。
自己破産を決意したSさんですが、何をどうすればよいのか解りません。
債務整理を勧めた友人も同じです。そこでネットで調べてみると「弁護士」や「司法書士」が引き受けてくれると書いてあります。
でもどちらに頼めばよいのでしょうか?
弁護士は全ての法律事務手続きができる
日本の国家資格の中で最も難関なのが、医師と弁護士だと言われています。
弁護士は司法試験に合格し司法修習を得て、日本弁護士連合会に登録されることで始めて業務に従事することができます。
実際には各エリアの弁護士会に所属するのですが、弁護士になるための道は思ったよりも厳しいのです。
弁護士の業務は法律事務手続きが主で、弁護士法第72条には「原則として弁護士以外が法律事務を行うことを禁止する」との内容が書かれています。
つまり、法律事務の代行は、原則として弁護士しかやってはいけないと法律で定められていたのですね。
また訴訟における代理人としての業務も認められており、本人の代理人として裁判に出席することも可能です。
■弁護士業務のポイント
- 法律事務を全て行うことができる
- 訴訟行為を行うことができる
- 本人に変わって代理行為ができる
- その他
司法書士は法律関係の書類作成業務が原則
司法書士は司法書士試験に合格し、司法書士連合会に登録されて業務が開始できる資格で、主に法律関係の書類作成を代行します。
■司法書士が作成する主な書類
- 不動産の登記に関する書類
- 会社の登記に関する書類
- 裁判所に提出する書類
- 検察、警察に提出する書類
- その他
司法書士の業務として身近なものに「不動産登記」があります。
特に売買契約では契約に立会い、契約書のチェックや必要書類の確認を行う業務が行われており、円滑に契約が終了した後に法務局での登記を行います。
このようにどちらかと言えば、民間の書類代行とのイメージが強い司法書士ですが、一定の債務整理では代理人としての仕事を行うことがあります。
司法書士の中には「認定司法書士」と呼ばれる資格があります。
認定司法書士は法務省が行う研修を受けて合格した司法書士で、一定の弁護士業務を行うことができることが特長です。
つまり、全ての法律事務手続きを弁護士だけの業務にしていると、弁護士の人数が足りなくなる恐れから、一部を司法書士に開放したと言う訳ですね。
基本的には債務整理案件に絞って仕事をしている弁護士事務所の方が圧倒的なデータの事例、解決方法の成功事例を持っていると言えるでしょう。
債務整理における弁護士と司法書士の違いは何か?
認定司法書士制度が生まれて、弁護士業務ができるようになったとは言え、それはあくまで限定的な業務に限ったものです。
認定司法書士は債権が140万円以下の場合において、弁護士と同等の訴訟業務ができますが、それを超えると書類を作成する業務しかできません。
つまり140万円以下の借金であれば弁護士でも司法書士でも同じと言うことです。
またこの140万円の解釈ですが借金の合計ではなく、あくまで債権者ごとの金額だと思って下さい。
例えば100万円の借金を5社からすると、合計では500万円の借金ですよね。
140万円を超えていますが、あくまで1社では100万円なので認定司法書士が業務を行うことが可能になります。
ただし、認定司法書士が代理人となれるのは簡易裁判所のみであり、それ以外の裁判所では訴訟代理行為を行うことはできません。
自己破産は簡易裁判所ではなく地方裁判所に申し立てを行いますので、債権額が140万円以下であっても司法書士が代理人になることはできません。
扱う裁判所の種類によっても違いがあることを覚えておきましょう。
司法書士に依頼する場合には弁護士に比べるとできない事がある事も覚えておくと良いでしょう。
自己破産における弁護士と司法書士の違い
自己破産は地方裁判所が管轄する事案で、弁護士と違い司法書士は原則書類作成しかできないことになっています。
そこで自己破産の依頼における弁護士と司法書士のメリット、デメリットを比較してみましょう。
自己破産を弁護士に依頼するメリット&デメリット
【メリット】
- 自分の持っている資料を渡すことで全ての提出書類を作成してくれる
- 裁判所への申し立てや出廷についても代理人として活動できる
- 丸投げで安心感がある
- 手続きが早く終了する場合がある
- その他
【デメリット】
- 司法書士と比較して費用が高い
- 知らないところで破産手続きが進んでいる
- その他
最大のメリットは安心感です。弁護士の場合には面倒な手続き、難しい法律関係の手続きを丸投げで行ってくれます。失敗するリスクを減らす事で借金返済への安心感が生まれます。
自己破産を司法書士に依頼するメリット&デメリット
【メリット】
- 弁護士に依頼するよりも安価な費用でできる
- 提出書類を作成し裁判所へ提出してくれる
- 丸投げでないので司法書士と一緒に作業する充実感がある
- その他
【デメリット】
- 代理業務ができず裁判所の出廷(審尋)は必ず債務者が行かなくてはならない
- 破産手続きが3ヶ月から半年程度かかる
- 一緒に出廷できないので不安がある
- 事前のシミュレーションなどの準備が多い
- その他
弁護士依頼に比べると手間がかかる分、費用が安くなるケースが多いと言えるでしょう。
弁護士の最大のメリットは丸投げ
弁護士に依頼する最大のメリットは「丸投げ感」です。
弁護士と打ち合わせを1回行ない、あとは電話と裁判所で1回会っただけで、免責まで終了してしまうことは珍しくはありません。
特に裁判所が本人の出廷を求めない限りは、全てのことを弁護士が代行してくれるのです。
また弁護士が代理人となっているケースでは「即日面接」と言って、破産申立を行ったその日(または3日以内)に、裁判官との面接を行うことができる制度があります。
このことで破産手続きを早期に終了させることも可能です。
つまり弁護士への依頼は債務者本人が見えないところで作業が進むので、果たして自分が破産をしているのかとの自覚を得ることができないことがあります。
気が付いたら免責許可決定の通知を受け取ることになり、「こんなに簡単なの?」と驚いてしまいます。
しかし、こんなに簡単な弁護士にもデメリットはあります。
まずは費用が司法書士と比較して高くなることです。
代理業務を行う弁護士は司法書士よりも、裁判所に行く機会も多くなることから費用が高くなってしまうのです。
さらに全てを丸投げにしてしまうことから、債務者の破産についての意識が薄れ、破産終了後にまた新たな借金をすることもあります。
破産手続きに苦労していないので、身に沁みていないのですね。
司法書士は費用が安くコストパフォーマンスは高い
これに対して司法書士のメリットは費用が安価で済むことです。
また代理業務はできないと言っても、裁判所への申し立てや書類の提出は全て行ってくれることから、そこは弁護士と変わりません。
また丸投げではなく、数回の打ち合わせや裁判所でのシミュレーションを行うことで、自分で免責を勝ち取るとの意識が芽生えます。
そうすることで免責が出てからの生活を真摯に考えることもできるのです。
司法書士のデメリットとして代理業務ができないことが上げられますが、このことはあまり大きな問題にはならないかもしれません。
つまり代理業務ができないことで審尋(審問)では一緒に入室できませんが、裁判所の廊下で待っていてくれる司法書士もいます。
また審尋は10分~20分程度で完了することから、そもそも代理人についてきてもらう必要性がないかもしれません。
しっかりシミュレーションしていれば代理人に付いてもらわなくても、誰でもできる面接と同じものと考えて下さい。
自己破産の面接‐破産審尋と免責審尋には注意‐手続き後こそ慎重に対応
弁護士費用の目安は法テラスの基準を参考に
自己破産における弁護士や司法書士の費用は、基本的に自由化されており、各事務所によって価格はマチマチです。
まず弁護士の大手法律事務所のホームページを見ると、同時廃止案件(資産がなく管財人が付かない)案件で、約50万円と高額になっています。
この費用には破産に関する手続きが全て含まれてはおらず、別途出張料なども請求されることもあります。
実は弁護士費用が自由化される以前には日本弁護士連合会が報酬基準を定めており、あくまで基準ですが自己破産で20万円が目安とされていたのです。
つまり自由化することで、なんと2倍以上にも高騰したことになります。
自己破産を弁護士に依頼するにはまず相談をしなくてはいけません。
借金の額や債権者の数を説明して、実際の費用を弁護士が提示するのですが、一定の基準が解らないと高いか安いか判断することができません。
そこで参考にしてもらいたいのが「法テラス」の「代理援助立替基準」。
法テラスは金銭的に困窮している人に対して、弁護士報酬を立て替えしてくれる国の機関で、法テラスから直接弁護士へ費用が振り込まれる仕組みになっています。
立て替えしてもらった費用は、後々利用者が法テラスへ返済するので、直接弁護士との支払いはありません。
最近ある弁護士が法テラスを仲介した案件にも関わらず、直接依頼者からも支払いを受ける問題が発生し、弁護士は謹慎することになりました。
つまり法テラスで目安にしている費用は、十分弁護士が自己破産の業務を行えると判断した金額で、法テラスを仲介した案件はそれ以外にお金を請求してはいけないのです。
法テラスの自己破産における代理援助立替基準(弁護士)
- 債権者1社~10社:152,600円(実費含む)
- 債権者11社~20社:174,200円(実費含む)
- 債権者21社~:206,600円(実費含む)
- 破産管財人選定:239,000円(実費含む)
- 処理が困難な案件:289,657円(実費含む)
弁護士費用は自由化されていますが、国が運営する法テラスを仲介した自己破産では、債権者10社以下で152,600円の費用しか支払いません。
つまり弁護士はその費用だけで自己破産の手続きを行うことになります。
つまり152,600円あれば一般的な自己破産の代理業務は行えると、国が認めていることになるのです。
そこでこの代理援助立替基準を自己破産における弁護士費用の基準に捉えると、やはり「20万円」が目安になることが解ります。
大手法律事務所では50万円もかかる自己破産ですが、目安は20万円と思ってよいのです。
この30万円の差はどこから出るのか詳細は不明ですが、きっと能力の高い弁護士が揃っているのでしょうね。
しかし安心して下さい。
弁護士事務所の中には法テラスの代理援助立替基準に準拠した、費用設定を行っているところもあります。
そのような法律事務所では費用を20万円程度に設定しており、安価に手続きを進めることが可能です。
また弁護士費用を支払う余裕がない人は、法テラスの代理援助立替を利用するのもよいでしょう。
司法書士は弁護士費用の6割程度が基準
司法書士は代理業務ができないことから費用も弁護士より安くなっています。
いくつかの司法書士事務所のホームページを見てみると、17万円から20万程度と記載されています。
これは大手弁護士事務所の半額以下の費用設定で、法テラスが作成する代理援助立替基準(弁護士)と同程度になっていることが解ります。
しかし、法テラスは弁護士だけではなく司法書士も仲介しており、司法書士に対する代理援助立替基準も作成されています。
法テラスの自己破産における代理援助立替基準(司法書士)
- 債権者20社まで:103,400円(実費含む)
- 債権者21社以上:114,200円(実費含む)
20社から借金をしていると仮定して、弁護士では174,200円、司法書士では103,400円でだいたい4割程度少なくなることが解りますね。
この基準額が高いか安いのかを判断することはできませんが、弁護士よりも半分の費用で手続きが行えるのですから、司法書士の方が依頼しやすい状況にあるのは間違いありません。
弁護士と同じく司法書士も法テラスを利用することができるので、費用で心配な人は相談してみましょう。
安心を取るなら弁護士だけど…どうする?
先に紹介したSさんは色々と検討した結果、費用の安い司法書士に依頼することに決めました。
彼の借金は4社と比較的少なく、債務整理も簡単なことが決め手になったようです。
また自分の債務整理を全て丸投げにしてしまうことにも抵抗があったそうです。
弁護士と司法書士…単に費用だけで比較することはできないのは事実で、弁護士に依頼しなかったことで破産はできても免責できなかったとの話もあります。
また債務整理が苦手な弁護士もいれば、得意な司法書士もいるでしょう。
法的な資格の違いだけで業務が上手だと言うことでもないのです。
そこでどちらに依頼するかを考える上で、債権者の数を目安にする方法はどうでしょうか?
債権者が1社~5社までであれば費用が安い司法書士、6社以上であれば丸投げ安心の弁護士に依頼するのです。
債権者が少ないと代理業務のない司法書士でも、債務者が十分対応することが可能です。
しかし20社にもなると色々と大変ですよね。そこで債権者の数でどちらに依頼するかを判別するのです。
一種の目安にしかなりませんが「どちらに依頼しようか?」と困った時には思い出して下さいね。
もし自分が自己破産しなくてはいけない状況になったら…弁護士、司法書士どちらに依頼しますか?
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